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納期と生産性の関係

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この記事の感想。

生産性の定義は経済学上は右往左往してる。そもそも生産量の定義から違う。都市伝説として語られてるのは「生産量とは重量である」みたいな話。だから旧ソ連のテレビにはレンガが入ってた、みたいな。これは笑い話であるというとがわかりやすいけど、上記の記事でも生産性の定義はあやふやだ。

ところが会計上は「労働生産性」として定義ははっきりしている。「従業員一人当たり付加価値」のことだ。付加価値も一般名詞に近いので定義が迷うところだけど、会計上も付加価値の定義は明確となってる。細かい差はあるけど、ほぼ「粗利」とか「売上総利益」と同等だと思っていい(原価に何を含めるかの差はあるので厳密には粗利と付加価値は違う)。売上から原価は引かれてるけど人件費はまだ引いてない状態。まだ「会社と従業員が山分けする前」のお金だと思っていい。

労働生産性をわかりやすく言うと「従業員一人あたりの粗利」。

つまり「納期がなければ生産性が上がる」という説は「納期がなくなれば一人あたりの粗利は増える」と同じ意味になる。

粗利の増やし方はシンプル。で売上が上がるか原価が下がるか。じゃぁ以下の問に答えてみよう。売上は商品単価x販売数で分解される。

  • 納期がなくなれば商品単価が上がる?
  • 納期がなくなれば販売数が上がる?
  • 納期がなくなれば原価が下がる?

どれも納得感もなければ、相関もない。

じゃぁ、納期がない職種の人でもそれなりにお給料がもらえているのは事実だ。どんな企業でも納期がこれといってない従業員はいる。パートタイマーも依頼されたタスクを数分で繰り返すだけなら「いわゆる納期」はない。

マイクロソフトの今のビジネスモデルは、Azureというクラウドサービスで稼いでいる。ユーザがお金を払っているのはマイクロソフトの新しいソフトウェアに支払ってるのではなく、Azureのデータセンターのコンピュータの貸出にお金を払ってる。だからマイクロソフトのソフトウェアエンジニアに納期がないのは当然。じゃぁマイクロソフトに納期はないかというとそんなことはなく、拡大し続けるAzureの契約者数に対してデータセンターのマシンをキッティングしている人はめちゃくちゃ時間に追われてる。新しいデータセンターも確保しないといけない。どこかの誰かは用地確保で地上げも大急ぎだ。

Azureのビジネスが始まる前はマイクロソフトの商品はソフトウェアそのものだから、新バージョンの発売に合わせて納期が存在した。闘うプログラマーを見ればわかるように、地獄のような納期を前にマイクロソフトのエンジニアだって苦労をしている。ちなみに闘うプログラマーの原題は「Show Stopper! - The Breakneck Race to Create Windows NT and the Next Generation at Microsoft」なので、納期を目の前にした地獄の行進で屍を超えた結果が今のNTカーネルといえる。

「納期など私には関係がない」と言ってる従業員はそもそも販売にも製造にも関係がない可能性がある。「今私が会社から居なくなったら、この会社の売上は下がる?原価は上がる?」という問いに対していずれかがYESなら生産性にプラスの影響を与えてる。

ここでは生産性の定義を「一人あたり粗利」と私にとって身近な定義で抑え直したのでやや意地悪かも知れない。ただし付加価値の総量をGDPとして定義されていたりもするので、会計的にも社会的も生産の定義はもはや勝負がついてる。